映画『怪物はささやく』のネタバレです!
スペインのアカデミー賞であるゴヤ賞を9部門受賞した『怪物はささやく』
『パンズ・ラビリンス』の製作スタッフがイギリスの児童文学を完全映画化。
孤独な少年と怪物の駆け引きを描いたダークファンタジーです。
今回はそんな映画『怪物はささやく』の詳しいあらすじやネタバレについて触れていきたいと思います。
※注意:結末ラストまでネタバレしていますので映画を見ていない方はご注意ください。
あらすじ・ストーリー
では、まずあらすじから。
13歳のコナー(ルイス・マクドゥーガル)は母親のリジー(フェリシティ・ジョーンズ)と二人暮らし。
しかし、リジーは末期ガンで在宅療養中のため家事はすべてコナーが行っていました。
コナーはクラスの中で浮いた存在でクラスメイトにいじめられる毎日です。
それらのストレスによる影響なのか、地割れした穴に母親が吸い込まれていく悪夢
を毎晩みるようになります。
ある夜のこと、コナーが自分の部屋でスケッチブックに絵を描いていると突然、大きな地震が!
時刻は12時07分。
窓から外を見ると教会の墓地にそびえ立つイチイの巨木が怪物(声:リアーム・ニーソン)に変身して歩いてきました。
そして、コナーの前までやってきて
「これから3つの物語を話してやる。3つの物語を話し終わったら最後はお前の真実を語れ」
と言い残し、去っていきます。
数日後、母親リジーの病状が悪化。
祖母(シガニー・ウィーバー)が家を訪ねてきました。
リジーの入院に伴いしばらく祖母の家での生活を余儀なくされますが、祖母と折り合いがよくないコナーは反抗的な態度をとってしまいます。
その夜、コナーの前にふたたび巨木の怪物が現れます。
やはり時刻は12時07分でした。
コナーは怪物に祖母を追い返すよう頼みますが、怪物はそれを無視して1つ目の物語を話しはじめました。
「黒の王妃と若き王子」の物語
かつてこの地に王国があった頃、魔王との戦いで、王様は息子と王妃を失ってしまいます。
唯一の跡継ぎとして残った孫は国民から慕われる王子へと成長。
将来の王様として期待されていました。
ところが、王様は若い王妃と再婚。
その後、みるみる体調を崩して、ついに王様は亡くなってしまいました。
そのようなことがあったため、王妃の正体は魔女なのでは?という噂が立ちます。
ですが、孫である王子はまだ王様になれる年齢ではなかったため、結局、王妃が王国を治めることになりました。
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まだ若い王妃は王子との結婚を要求しますが、王子はそれを拒否し、恋人である農家の娘と駆け落ち。
イチイの巨木の下で夜を明かしますが、翌朝、恋人は殺されていました。
これは王妃の仕業にちがいない。
王子は国民を扇動して王妃を打倒します。
しかし処刑されそうになった王妃を巨木の怪物が助け出します…。
実はこの物語には「別の真実」が隠されており、農家の娘を殺した真犯人は王子で、自分が王様の座につくため、王妃に罪をかぶせていたのでした。
魔女だと噂されていた王妃は何も悪いことはしていませんでした。
王様の死因も老衰による自然死だったのです。
「物語には二面性があるんだ」
そう言って怪物は去っていきました。
それから数日後、再婚してLAに暮らす父親がコナーを訪ねてきました。
久しぶりの父との再会に喜ぶコナーはLAで父と暮らすことを希望しますが、それが無理だとわかって落胆。
重い足取りで祖母の家に戻ります。
祖母の家のリビングには祖母が大事にする年代物の柱時計があり、コナーはその時計の針を動かします。
針が指した時刻は12時07分。
すると、巨木の怪物がコナーの前に現れ、2つ目の物語を話しはじめました。
「薬師の秘薬」の物語
この町で工業化が進んだ150年前。
自然の植物を調合して薬をつくり、どんな病気も治してしまう薬師がいました。
薬師は教会のイチイの木を少し分けてほしいと神父に頼みますが断られてしまいます。
さらに神父はその古臭い治療法に異を唱え、薬師を廃業へと追い込んでしまいます。
ところが、神父の2人の娘が謎の重病に。
神父の祈りも近代医学も効果がなく、藁にもすがる思いで薬師のもとへ。
娘を助けてくれたらイチイの木を渡し、信仰も捨てると神父は薬師に言いましたが、都合の良い時だけ自分を頼る神父に腹を立て、薬師は願いを聞き入れませんでした。
その結果、娘2人は死んでしまいます…
この物語の神父に腹を立てた怪物は罰として教会を破壊しはじめます。
コナーも一緒になって壊しますが、気がつけばそこは祖母の家のリビングでした。
そこへ祖母が帰宅。
破壊された家具を見て祖母は言葉を失い、他の部屋にこもってしまいます。
「何か言ってよ。僕を罰してよ」
コナーは祖母に泣いて謝りますが、祖母は無言のままでした。
相変わらずクラス内で浮いているコナー。
食堂で1人ランチを食べているとクラスメイトがやって来て、「今日からお前を透明人間として扱う」と言って去っていきました。
時刻は12時07分ではありませんでしたが、コナーの前に怪物が現れます。
そして3つ目の物語を話しはじめました。
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○ラスト・結末(ネタバレ注意!)
以下、ネタバレ含みます。
「透明人間の男」の物語
誰にも気づいてもらえない孤独な男がいざ人々から存在を認識されるようになると、かえって孤独感を強めてしまう結末…
とても短いストーリーでしたが怪物に背中を押され、コナーはクラスメイトに殴りかかりました。
その結果、クラスメイトは病院送りに。
コナーは退学を免れたものの学校でさらに浮いた存在になってしまいます。
いっぽう、母親リジーの病状はさらに悪化。
最後の望みだった新薬も効果なし。
コナーは墓地にあるイチイの巨木の前に立ち、母親の病気を治してと怪物に訴えます。
しかし、怪物は言いました。
「俺が現れたのはお前の母親を治すためではない。お前を癒すためだ」
さらに「3つ物語が終わった。次はお前が真実を話す番だ」と。
コナーは真実と向き合うのが怖くて、その場を立ち去ろうとします。
すると、教会の前に母親リジーの姿が。
ところが足元が崩れだし穴の中へ。
コナーが毎晩みている悪夢の光景でした。
コナーはリジーの両手を必死でつかみ、なんとか引き上げようとします。
そんなコナーに怪物は何度も真実を話すよう叫びつづけます。
支えきれなくなったコナーはリジーの手を放してしまいました。
そしてこう言いました。
「本当は終わらせたかったんだ…」
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母親に生きていてほしいと願いながらも、もうこれ以上苦しみたくないという矛盾した思いが。
「物語は真実のつらさをやわらげてくれる」
怪物はコナーに優しく語りかけました。
誰にも言えずに抱え込んでいた思いをすべて吐き出せて、心が落ち着いたのか、コナーは巨木の下で眠ってしまいました。
そんなコナーを見つけたのは祖母でした。
リジーが危篤状態に陥ったため、コナーを探していたのです。
2人は祖母が運転する車で病院へ。
車内で互いの思いを伝え合い、2人は仲直り。
リジーの最期にも間に合いました。
母親の手を握るコナーの後ろには優しい表情の怪物が。
「気が済むまで暴れなさい」
ひとりで悲しみを抱え込まないよう、リジーはコナーに最後の言葉を残します。
リジーはコナーと祖母に看取られながら天国へと旅立っていきました。
祖母の家に戻ったコナーは祖母から部屋のカギを渡されます。
そこは昔、リジーが使っていた部屋で机の上にはリジーが描いたスケッチブックが。
ページをめくると、そこに描かれていたのは怪物が話してくれた3つの物語でした。
そして最後のページにはリジーらしき少女と怪物が描かれていました。
End
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感想・まとめ
ネタバレを含みつつあらすじなどについてご紹介しましたが、2007年公開の『パンズ・ラビリンス』はダークファンタジーの傑作でしたが、そのスタッフが『怪物はささやく』の
製作を担当しているだけあって、現実と空想の世界を行き来する設定や幻想的な映像美を用いた世界観など共通する部分がとても多い作品でした。
現実がつらすぎて受け止めきれないとき、空想の世界にでも逃げこまないと自分を支えきれない気持ち、すごくよく分かります。
親の介護をしていた頃、コナーと似たようなことを考えており、心の中には「楽なりたい自分」が常にいました。
そんな歪んだことを考えてしまう自分をどこかで罰している自分もいました。
13歳のコナーにとって母親との死と向き合うのは本当につらくて苦しかったと思います。
怪物が語る3つの物語はどれも繊細で美しいアニメーションで描かれつつも、教訓として現実の不条理さを伝える内容になっていて、とても考えさせられました。
自分の心の中に棲んでいる怪物がささやく物語にも耳を傾けてみたくなる、そんな作品でした。