映画『ラブレス』のネタバレです!
第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたロシア映画『ラブレス』。息子の失踪に直面した離婚調停中の夫婦を描いたサスペンスです。
両親から愛されていないことを知って泣きじゃくる息子。我が子に対して無関心な両親。とても心が痛くなる内容ですが、観終わったあとに終盤のある場面を思い出してゾッとする…そんな仕掛けのある作りになっています。
今回はそんな映画『ラブレス』の詳しいあらすじやネタバレについて触れていきたいと思います。
※注意:結末ラストまでネタバレしていますので映画を見ていない方はご注意ください。
映画『ラブレス』のあらすじ
12歳の息子がいる、関係の冷えきった一組の夫婦。
夫のボリスは一流企業に勤務し、妻のジェーニャは高級美容サロンでマネジメントを任されています。
現在、2人は離婚協議中で、自宅マンションを売りに出そうとしていました。
ともに愛人がおり、どちらが息子を引き取るかで押し付け合いのケンカを。
ジェーニャは寄宿学校に入れることを提案しますが、「子どもは母親が育てるべきだ」と自分は引き取る気がないにもかかわらず非難するボリス。
息子のアレクセイは、そんな2人の口論をこっそり聞いて、両親から愛されていないことに深く傷ついていました。
すでに愛人宅で生活しているボリス。相手は若い女性で、ボリスの子どもを身ごもっていました。
ボリスにはもうひとつ頭の痛い問題が。勤務先の社長が厳格なキリスト教徒であるため、離婚したことが会社にバレるとクビになってしまうという心配も。
そんなボリスの心配事まで攻撃材料にする妻のジェーニャですが、彼女の方は、成人した娘をもつ裕福な年上男性と付き合っています。
幼少期から母親に愛されてこなかったジェーニャは、自分も子供を愛せないでいることを彼に告白。そんな彼女のことをまるごと受け入れてくれる懐の深い男性でした。
2人が互いの愛人宅で過ごしている間に、息子のアレクセイは家を出ていってしまいます。
愛人宅から帰ってきたジェーニャは、学校からの連絡で、アレクセイが2日間登校していないことを知りました。
ボリスに電話をし、アレクセイの行方を尋ねますが、子どもを残して外泊していたことを逆に責められ、怒鳴られてしまいます。
事を荒立てなくないボリスは様子を見るよう提案しますが、ジェーニャは独断で警察に相談。
警察が自宅にやって来ますが、「反抗期特有の家出で、きっと数日後には戻ってくるでしょう」と動いてくれませんでした。
そこでジェーニャは、市民ボランティアの捜索救助団体に協力を依頼します…。
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映画『ラブレス』のラスト・結末(ネタバレ注意!)
以下、ネタバレ含みます。
捜索隊の指示のもと、夫婦はボランティアスタッフとともにアレクセイが行きそうな場所を捜索。最初に向かった先は、ジェーニャの母親が暮らす家でした。
しかし、アレクセイの姿はなく、ジェーニャの母親からは自業自得だと罵声を浴びせられてしまいます。
実の母からのきつい言葉に怒りが収まらないジェーニャは、帰りの車中でボリスに八つ当たり。
「結婚したのは母親から逃げたかったから。妊娠したのがすべての失敗。中絶すればよかった。あなたのせいで人生が台無し!」と後悔の念を口にします。
とんだとばっちりを受けたボリスは、誰もいない国道にジェーニャを降ろして、車を発進させました。
ジェーニャは愛人を迎えに来てもらい、怒りを鎮めます。さらに市内の病院にも片っぱしから電話して、アレクセイと同世代の子供が病院に搬送されていないかを確認。該当者がいる病院に向かいますが、入院していたのは別人でした…。
捜索を続けるなか、アレクセイがクラスメイトと秘密基地を作っていたことが分かりました。
クラスメイトからの聴き取りによって、それが森の中にある廃墟ビルの地下であることが判明。
さっそく捜索隊はボリスとともにその廃墟に足を踏み入れますが、収穫は得られませんでした。
人海戦術で市内の雑木林や河川敷なども捜索。防犯カメラを調べたり、たずね人の貼り紙を町中に貼っていきますが、有力な情報はいっこうに得られず。
そんな中、捜索隊のもとに身元不明の少年の遺体が発見されたという報告が入ってきました。
捜索隊のリーダーに付き添われ、ボリスとジェーニャは死体安置所に向かいます。
無残に傷ついた死体を見せられ本人確認を求められますが、ジェーニャはショックのあまりに泣き崩れてしまったものの、「息子じゃありません」と答えました。
捜索隊のリーダーが「念のためにDNA鑑定をお願いしてみては?」と提案しますが、それに対してジェーニャは声を荒げて「その必要はありません!」とDNA鑑定を拒否しました…
それから事態は何の進展も見せぬまま1年が経過。自宅マンションにも買い手がつき、リフォームに向けての解体工事が行われていました。
ボリスと若い愛人の間にも子どもが誕生していましたが、子供が好きではないボリスは、新たに生まれた我が子へも乱暴に接していました。
いっぽう、ジェーニャも年上の愛人と暮らしていましたが、一緒の部屋にいてもスマホばかり見て、いっさい会話をしない寒々しい空気が漂っていました。
町の電柱には1年前に貼られたたずね人の貼り紙が。そして、アレクセイが下校時に寄り道していた川景色が映し出されます…。
End
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映画『ラブレス』の感想・まとめ
ネタバレを含みつつ、あらすじなどについてご紹介しましたが
行方不明の息子が、生きているにせよ死んでいるにせよ、最後には見つかって終わるのかと思っていましたが、息子が行方不明のまま映画はラストを迎えます。
しかし、ここで思い出すのが終盤の死体安置所のシーン。傷だらけの遺体を見せられたジェーニャがショックのあまり泣き崩れていましたが、実はあの遺体こそアレクセイだったのでは?という憶測が。
DNA鑑定を頑なに拒否し、必死に口裏を合わせようとする不自然さ…
このまま息子が見つからなければ、2人とも新しく人生を再スタートできる。咄嗟にそう思いついて「息子じゃありません」と答えたのではないでしょうか。
そもそも、捜索隊のボランティアスタッフが必死になって他人の子供を捜しているのに対し、我が子でありながらどこか他人事のような夫と妻。
このまま見つからないで欲しいと心のどこかで願っているのがスクリーンからも伝わってきて、なんともやるせない気持ちになりました。
もしアレクセイが死んでいたのなら、それはそれで救いのない結末ですが、人生を再スタートさせた夫と妻が、また同じことを繰り返しそうな雰囲気で終わるラストにも絶望的な気分にさせられました。
最初から最後まで緊張感があり、何かが起こりそうな不穏な空気に包まれていましたが、ロシアの凍てつく風景のように、観終わったあとも寒々しい気持ちが残りつづける作品でした。