映画『テルマ』のネタバレです!
第90回アカデミー賞と第75回ゴールデン・グローブ賞の外国映画賞(ノルウェー代表作品)に選ばれた北欧ホラー映画『テルマ』。
監督は、ラース・フォン・トリアーの遺伝子を受け継ぐヨアキム・トリアー。
ノルウェーを舞台に、厳格な家庭で育った少女テルマが同級生の女性に恋心を抱き、湧きあがる欲望と罪の意識に苦悩しながら恐ろしい力に覚醒していく物語です。
今回はそんな映画『テルマ』の詳しいあらすじやネタバレについて触れていきたいと思います。
※注意:結末ラストまでネタバレしていますので映画を見ていない方はご注意ください。
「テルマ」のあらすじ
では、まずあらすじから。
幼い娘のテルマを連れて狩猟にやって来たトロンは、凍った湖の上を歩き、雪深い森の中へ。すると、2人の前に一頭の鹿が現れました。トロンはライフルを構えて鹿に銃口を向けますが、次の瞬間、その銃口をテルマの方に向けました。しかし、トロンには撃つことができませんでした…。
それから十数年が経ち、テルマはオスロの大学に入学。親元を離れて寮生活を始めていました。人里離れた田舎町で育ち、信仰心がつよい厳格な両親に育てられたテルマにとってはすべてが新鮮に映ります。
テルマを心配して毎日のように電話をかけてくる母親は車椅子生活でした。
ある日のこと。テルマが大学の図書館で勉強していると、黒い鳥が窓ガラスに激突。その直後、痙攣が起こりテルマは気を失って倒れてしまいます。すぐに病院で治療を受けますが、どこにも異常はみられず原因は分かりませんでした。
翌日、テルマが大学のプールで泳いでいると、アンニャという女子学生が声を掛けてきました。テルマが発作を起こしたとき、彼女は隣の席に座っていたのです。
Facebookでつながった2人は意気投合。自由奔放で大人びたアンニャに憧れを抱いたテルマは彼女のアパートを訪ね、初めてお酒を飲み、タバコも口にします。同世代の若者たちがしていることを経験し、大人の世界へと足を踏み入れていくテルマでした。
後日、テルマはアンニャに誘われて舞台を観に行きますが、上演中にアンニャはテルマの手を握りしめ、太ももにも手を伸ばしてきました。テルマは激しく動揺。ふたたび痙攣が起きはじめたため、客席から逃げ出してしまいます。
テルマを心配して追いかけてきたアンニャ。2人は見つめ合いキスをしますが、敬虔なクリスチャンのテルマはこの行為を恥じて帰ってしまいます。罪悪感で頭がいっぱいのテルマは教会で必死に懺悔をするのでした。
それから数日後、男友達に誘われてやって来たホームパーティーでアンニャと再会。その場の成り行きでマリファナを吸ってみることに。すると頭の中にはアンニャとの性的妄想が。気分が悪くなったテルマはその場で嘔吐し帰ってしまいます。
その後も痙攣を伴う発作に何度も襲われ、その原因を調べるためにテルマは精密検査を受けることを決意。入院して脳活動を調べることに…。
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「テルマ」のラスト・結末(ネタバレ注意!)
以下、ネタバレ含みます。
彼女の故郷の病院から取り寄せたカルテによれば、幼い頃に精神衰弱で発作を起こしていたという記録が。医師からそのことについて質問されますが、テルマには記憶がありませんでした。
しかし、6歳の頃の記憶がふと蘇ってきました。生まれたばかりの弟の世話で手がいっぱいの母親にかまってほしくてテルマが何かを念じると、弟は姿を消してしまいます。その直後、弟はソファの下で泣きじゃくっていましたが、テルマはにこの現象が理解できませんでした。
発作を誘発するためにストロボを点滅しつづける検査が開始。ちょうど同じ頃、アンニャの部屋では異変が起きていました。窓ガラスが粉々に砕け、アンニャは姿を消してしまいます。
精密検査の結果、てんかんではなく、心因性発作という診断が。ストレスやトラウマが原因かもしれないと告げられますが、遺伝の可能性もあると言われ、精神を病んでいる祖母が老人ホームにいることを知らされます。
祖母は亡くなったと両親から聞かされていたので混乱するテルマでしたが、祖母がいる老人ホームを訪ねてみることに。しかし、祖母は強めの薬を投与されており意思疎通できない状態でした。
テルマのもとにアンニャの母親から電話が。アンニャと連絡が取れず、行方を知らないか?と尋ねる内容でした。テルマはアンニャの部屋に向かいますが、特に異変はみられなかったものの、窓に髪の毛の束のようなものが付着しているのを発見。
自分の発作との関連性を疑ったテルマは、過去をさぐるため実家に帰省します。彼女の帰省を喜ぶ両親でしたが、父・トロンが淹れてくれた紅茶の中に薬が入っていたらしく、意識が朦朧となるテルマ。
すると、トロンはテルマに語りはじめました。「お前には力がある。全身全霊で願うとその通りになってしまうんだ」と…。
テルマが6歳の頃、赤ん坊をお風呂に入れていた妻がちょっと目を離した隙に、赤ん坊が忽然と姿を消してしまいます。家の中を必死に捜しますが、テルマが指さした湖に慌てて走っていくと、赤ん坊は凍結した湖の中に浮かんでいました。わが子を亡くしたショックから妻は投身自殺を図って下半身不随に。
そして、「アンニャが消えてしまったのもお前の仕業だ」とトロンは言いました。
「彼女のことを愛していた」と訴えるテルマでしたが、「彼女はお前を愛してない。彼女に選択肢などなかった。お前は寂しさから彼女に消えてほしいと望んだんだ」と反論。
その夜、トロンは妻と相談し、テルマの殺害を決意。注射器を準備して棚にしまいます。
翌朝、トロンはボートに乗って湖の上でタバコを吸いますが、突然、体が炎に包まれました。湖に飛び込み、炎はいったん収まりますが、ボートに上がろうとした瞬間、ふたたび発火。トロンは悶え苦しみながら水中へと沈んでいきました。
目を覚ましたテルマは湖の中へと歩いていきますが、湖に浮かぶ無人のボートを見つけると、岸辺にUターン。仰向けになった瞬間、口の中から黒い鳥の死骸が。その直後、スマホにはアンニャからの着信通知が。
それを見たテルマはオスロへ戻ることに。トロンの行方が分からなくなって不安そうな母親でしたが、テルマが彼女に手をかざすと、母親は自分の足で歩けるように。
テルマが大学に戻ると、背後からアンニャが。2人は熱いキスを交わし、仲良く歩き出すのでした…。
End
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「テルマ」を見た感想
ネタバレを含みつつ、あらすじなどについてご紹介しましたが、『テルマ』を観た率直な感想としては、ホラー映画と言うよりも、ひとりの少女が親から自立していく姿を描いた青春映画という印象を持ちました。
今年公開された作品で言えば、『RAW~少女のめざめ~』に近いでしょうか。
もちろん衝撃的な場面も登場しますが、北欧の幻想的で美しい風景を活かした世界観には息をのみ、主人公のテルマを演じたエイリ・ハーボーの美貌と合わさって、芸術的な映像作品に仕上がっていたと思います。
まずは冒頭の狩猟シーンですが、凍結した湖を歩いて行く親子の俯瞰映像や、薄氷の湖を泳ぐ魚の映像、雪深い森をかきわけた先に現れた鹿からの展開など、なんとも言えない緊張感とロケーションの美しさとが混在し、短いシーンながらも印象に残るオープニングでした。
父親がなぜ娘に銃口を向けたのか? その理由は終盤で明らかになりますが、親元を離れたテルマが大人の女性へと成長していく過程で、封印していたはずの恐ろしい力に覚醒していく展開には目が釘づけです。
どうして両親があんなにも過干渉だったのか、前半は違和感だらけでしたが、観終われば納得。娘の特殊能力に両親も思い悩んでいたことが痛いほど伝わってきます。
大学のキャンパス上空を黒い鳥の群れが舞うシーンや、コンサートホールの天井に吊るされた巨大オブジェが大きく揺れ出すシーンなど、不穏な場面が数多く挿入されていて見ていて心がざわつきましたが、夢と現実の境界が曖昧になるシーンにも震えました。
一人の少女が親の保護から離れ、いかに自由を獲得するかという物語。俯瞰映像で始まり、俯瞰映像で終わるラストをハッピーエンドととるか否か、観た人によって意見が分かれそうです。