映画『ゲティ家の身代金』のネタバレです!
1973年にローマで発生した世界一有名な誘拐事件を、名匠リドリー・スコット監督が映画化した『ゲティ家の身代金』。
日本円にして総資産1.4兆円の大富豪ジャン・ポール・ゲティは、誘拐された孫の身代金50億円の支払いを拒否。その理由とはいったい? 無事に孫を救出することができるのか? 一級のサスペンス映画になっています。
ゲティ役は、映画完成間近にスキャンダル降板したケビン・スペイシーに代わって、クリストファー・プラマーが。この演技が高く評価され、アカデミー賞助演男優賞にもノミネートされました。
母ゲイル役をミシェル・ウィリアムズが、交渉人をマーク・ウォールバーグが演じています。
今回はそんな映画『ゲティ家の身代金』の詳しいあらすじやネタバレについて触れていきたいと思います。
※注意:結末ラストまでネタバレしていますので映画を見ていない方はご注意ください。
『ゲティ家の身代金』のあらすじ・ストーリー
1973年7月。イタリア・ローマで、夜道を歩いていた青年が何者かに誘拐されるという事件が発生。
青年の名はジョン・ポール・ゲティ三世。世界一の大富豪ジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)の孫でした。
イタリア人の誘拐犯グループは、1700万ドル(約50億円)という破格の身代金を要求しますが、ゲティはテレビのインタビューを通して「身代金は支払わない」と宣言。
身代金を支払ってしまうと他の孫たちも標的になってしまうというのが理由でした。しかし、それは表向きのコメントで、ゲティは稀代の守銭奴だったのです。
それでもゲティは別な方法で孫を救出しようとしていました。凄腕の側近で元CIAのフレッチャー・チィエイス(マーク・ウォールバーグ)に、誰がポールを誘拐したかを突き止め、誘拐犯からポールを取り戻すよう指示します。
ゲティは孫のポールを溺愛していましたが、息子夫婦の離婚がきっかけでポールとは疎遠に。
離婚の際、母親のアビゲイル・ハリス(ミシェル・ウィリアムズ)はポールの養育権をつよく主張、ゲティ一族から離れてしまいます。
母ゲイルには1700万ドルもの身代金を支払うことなど不可能なので、ゲティが暮らす豪邸を訪ね、身代金を用立ててもらえないかと直接交渉しますが、相手にしてもらえませんでした。
そんなゲイルにチェイスは協力を申し出ます。2人は身代金以外の方法でポールを救出する策に望みをかけ、一路イタリア・ローマへ。現地の警察とともに、誘拐犯グループを突き止めていきます。
その捜査の過程で、ポールが友人たちと狂言誘拐を計画していたことが明らかに。しかし、その計画が実行される前にポールは誘拐されてしまいました。
チェイスはそのことをゲティに報告。すると、「すべてを教えたつもりだったのに寄生虫のようになりやがって。身代金を払わなくて正解だった」と肩を落とすゲティ。
そして、「人間と違って美術品だけは失望させない」と言って、150万ドルもする高額な絵画を購入するのでした。
いっぽう捜査は進展をみせ、誘拐犯グループのアジトを割り出すことに成功。チェイスとゲイルは警官隊とともにアジトに向かいます。
アジトでは、犯人たちが荷物を運び出す作業をしていましたが、銃撃戦の末に犯人を確保。しかし、犯人の口から出たのは「ポールを売った」という言葉でした。その言葉どおり、ポールの身柄はイタリアマフィアの手に渡っていました…。
[adrotate banner=”3″]
『ゲティ家の身代金』のラスト・結末(ネタバレ注意!)
以下、ネタバレ含みます。
誘拐犯グループのリーダーだったチンクアンタは、誘拐犯と人質という立場ではあるものの、ポールとの間に信頼関係が生まれていました。そのことが買われて、イタリアマフィアの元でもポールの監視役に。
チンクアンタは公衆電話から何度もゲイルに電話をかけ、身代金の支払いを要求しますが、交渉は平行線のまま。
チェイスはゲイルから受話器を奪いとり、身代金を20万ドルに値切りますが、交渉は決裂し、電話は切れてしまいます。
「交渉から手を引くと見せかけるのも交渉術のひとつなんだ」とチェイスは説明。チェイスの交渉術は功を奏し、身代金の要求額は1700万ドルから700万ドルに。
いっぽう、新しいアジトに監禁されていたポールは脱出を試みます。無事に逃げ出すことができたものの、助けを求めた警察官とマフィアとが繋がっていて、連れ戻されてしまいます。
このことが悪い方向へと動いてしまい、ポールは右耳を切断されることに。犯人は、切断した耳たぶとポールの写真を新聞社に送りつけました。
新聞社はその写真を一面に掲載したいとゲイルに交渉。最初は渋るゲイルでしたが、写真の掲載を承諾。耳を切断されたポールの写真が掲載された新聞1000部をゲティ宛に送りつけます。
その新聞を見て驚いたゲティは、「身代金を用立てる」とゲイルに連絡。
しかし、守銭奴のゲティが提示した条件は、用立てた身代金はポールに貸し付けるというもので、養育権の放棄も条件に含まれていました。
他にお金を工面する方法が思いつかないゲイルはその要求に応じますが、今度は別な問題が。チェイスの交渉術によって身代金が400万ドルまで下がったものの、税金上の問題で100万ドルしか送金できないとゲティが言ってきたのです。
手元には100万ドルしかないにもかかわらず、ゲイルは記者会見を開き「身代金を全額支払う」とテレビの前で宣言。息子を取り戻したい一心で犯人を信用させるための芝居をうったのです。
そんなゲイルの姿に心を打たれたチェイスは、ゲティの元を訪ねて身代金を用立てるよう説得。その結果、身代金を全額調達することに成功します。
そして、いよいよ人質の引き渡し日が。ゲイルとチェイスは車のトランクに身代金を積んで指定された場所へ。
犯人グループの指示どおりに身代金を渡したことで、ポールは解放されました。
ゲイルとチェイスはポールを迎えに行きますが、解放された場所にポールの姿はありません。ポールは助けを求めてその場所から立ち去っていたのです。
いっぽう、警察が追ってきていることに気づいたマフィアのボスは、ポールを殺害するよう手下に指示。
ゲイルとチェイス、そして殺害を命じられた手下たちは、周辺を探し始めます。
先にポールを見つけたのはチェイスでしたが、次の瞬間、ポールは犯人グループに捕まってしまいます。
その時、ポールを助けたのは、監視役だったチンクアンタでした。こうしてポールは無事に母親の元へ…。
その頃、ゲティは悪夢にうなされながら豪邸の中をさまよっていました。そして、150万ドルで購入した絵画を抱きしめながら息を引きとります。
ゲティの死後、彼が遺した財産は孫たちへと相続されることに。そして、彼らが成人になるまでの間、ゲティの財産はゲイルが管理をすることになりました…。
End
[adrotate banner=”3″]
『ゲティ家の身代金』の感想
ネタバレを含みつつ、あらすじなどについてご紹介しましたが当初、大富豪のゲティ役を演じていたのはケヴィン・スペイシーでしたが、映画公開の1カ月前に急遽降板。
リドリー・スコット監督らの迅速な判断により、クリストファー・プラマーが代役に選ばれ、短期間で作り直したといういわく付きの作品です。
そんな状況にもかかわらず、クリストファー・プラマーは守銭奴の大富豪を見事に演じ、短期間で撮り直したとは思えないほどの完璧な役作りを見せました。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたのも納得の演技です。
大富豪でありながら人を信用することができず、美術品だけは自分を裏切らないという理由から高級絵画の収集に固執するあたりは、『鑑定士と顔のない依頼人』という作品を思い出してしまいましたが、お金目当てで群がってきたり利用しようとする人たちを見てきたら、そりゃ信用できなくなるよなあと、観ていて切なくなりました。
この事件自体、大富豪の孫だという理由で起きてしまった誘拐なわけですから。
誘拐されてから救出されるまでの二転三転する予断を許さない展開も、とてもスリリングで見応えがありました。
物語の中心人物である母親ゲイルを演じたミシェル・ウィリアムズも素晴らしく、失望と希望とを細かい表情で見事に演じ、引き込まれてしまいました。
ひとつの誘拐事件をめぐって、さまざまな人達のエゴがむき出しになる姿がリアルに描かれている『ゲティ家の身代金』、ぜひ劇場で。